能ある彼女は敏腕社長に捕獲される
と言うか、私は私で邪魔者ですよね?

それ以前に居心地が悪くて仕方がないんですけど。

もう本当にトイレに行って逃げた方がいいだろうかと思っていたら、
「あの…その方は…?」

東郷さんが私に気づいた。

…逃げられなくなってしまった。

「彼女は秘書だ」

社長が私の代わりに質問に答えた。

「秘書さんでしたか。

初めまして、東郷千咲(トウゴウチサキ)と申します」

「…門谷です」

丁寧にあいさつをした東郷さんに対して、私は名字だけ答えた。

我ながら感じが悪い。

東郷さんは気づいていなかったみたいで、
「それじゃあ、私はこれで」

そう言って私たちの前から立ち去ったのだった。

その後ろ姿を見送ると、
「社長の知りあいですか?」
と、私は社長に聞いた。
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