能ある彼女は敏腕社長に捕獲される
「兄ちゃんの名前を出したらいろいろと都合がいいし、兄ちゃんも口裏をあわせてくれると思ったから」

「…ちゃっかりしてるな、安定の紀香さんでホッとしてるわ」

兄はやれやれと息を吐くと、ビールを口に含んだ。

「スーツに靴にカバンと、結構良いものを着せてもらってるから変わったなと思ったんだよ」

「…えっ、そうなの?」

兄に言われた私はそう返事をすることしかできなかった。

「そうなのって…」

「社長が毎朝用意してくれたものをいつもそのまま着てるから…」

「マジか…」

兄はずっこけるようにカウンターに突っ伏した。

「秘書になってから自分で服を選ぶことがなくなったし、メイクも専属の人がきてやってもらってるし」

「…話には聞いていたが、相当なまでに気に入られているな」

兄は言った。
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