ヤンデレくんは監禁できない!
プロローグ
入院した!
真岡芽衣里の連絡はいつだって素っ気ないし、説明が足りない。だから彼氏の光滝凌はいつも「は?」と返している。それだけではなく、短すぎると何度も注意しているのだが、改善される様子はない。
今回の連絡だってそうだ。メッセージアプリに芽衣里から連絡が入ったのを見て、どうせ「修羅場終わった?」「原稿できた?」みたいな可愛げのないヤツだろうな、と凌は思う。それでも口元はどうしてもニヤけてしまって止められない。
しかしそれもメッセージを見るまでだった。
「入院した」
この4文字だけが画面に浮かんでいた。
凌は真顔でその4文字を見つめていたが、少し震える指で通話画面に切り替え、芽衣里が出るのを待つことにした。
1コール
2コール
3コール目で芽衣里が出た。
「なに? 入院したって」
低くぶっきらぼうな凌の声に、芽衣里は怯えることなく「ああ、襲われただけだよ」と返した。ちょっと転んだ、とでも言うような軽い調子で伝えられ、凌は息を呑んだ。電話を握る手に自然と力がこもる。
「何かに巻き込まれるのは慣れてるけどさ、入院は初めて」
芽衣里はあっけらかんとそう言って笑い、呑気に「全治一ヶ月だって」「母さんに頼んで大学に休学届け出した」と退屈そうな声で告げた。病院の待合室にでもいるのか、凌の耳に、遠くでざわざわと響きあう音が芽衣里の声と一緒に聞こえてきた。自身を落ち着かせようと、凌は短く息を吐き、芽衣里に質問を続けた。
「誰に?」
「知らない人」
「通り魔?」
「違うよ、あたしが女の人助けたら、逆恨みされた」
「…一から説明して」
凌のため息混じりの声に、芽衣里は昨晩の事件から説明しはじめた──。
今回の連絡だってそうだ。メッセージアプリに芽衣里から連絡が入ったのを見て、どうせ「修羅場終わった?」「原稿できた?」みたいな可愛げのないヤツだろうな、と凌は思う。それでも口元はどうしてもニヤけてしまって止められない。
しかしそれもメッセージを見るまでだった。
「入院した」
この4文字だけが画面に浮かんでいた。
凌は真顔でその4文字を見つめていたが、少し震える指で通話画面に切り替え、芽衣里が出るのを待つことにした。
1コール
2コール
3コール目で芽衣里が出た。
「なに? 入院したって」
低くぶっきらぼうな凌の声に、芽衣里は怯えることなく「ああ、襲われただけだよ」と返した。ちょっと転んだ、とでも言うような軽い調子で伝えられ、凌は息を呑んだ。電話を握る手に自然と力がこもる。
「何かに巻き込まれるのは慣れてるけどさ、入院は初めて」
芽衣里はあっけらかんとそう言って笑い、呑気に「全治一ヶ月だって」「母さんに頼んで大学に休学届け出した」と退屈そうな声で告げた。病院の待合室にでもいるのか、凌の耳に、遠くでざわざわと響きあう音が芽衣里の声と一緒に聞こえてきた。自身を落ち着かせようと、凌は短く息を吐き、芽衣里に質問を続けた。
「誰に?」
「知らない人」
「通り魔?」
「違うよ、あたしが女の人助けたら、逆恨みされた」
「…一から説明して」
凌のため息混じりの声に、芽衣里は昨晩の事件から説明しはじめた──。