秘書はあらがえない気持ちを抱いて 【おまけ①】
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社長室に入ると進一郎はいなかった。
テーブルの上の空になった重箱を片付けていると、ドアが開き進一郎が入ってきた。
「?」
どことなく機嫌が悪いような…
それは、端から見たら分からない微細な変化だったが、長年仕えている俺だから気付ける変化だった。
「進一郎、何かあったのか?」
「別に、何も。」
いや、何かあっただろ…
それからも進一郎の様子はおかしかった。
いつもなら『お菓子食べたい』だの『ゲームやりたい』だの『帰りたい』だの言う進一郎が、そういったことを一切言うことなく黙々と仕事をしていた。
仕事してくれるのは良いんだが。
こういう時は、大体…大方…ほぼ100%、俺のことで怒っている…
しかも…
「今日は21時まで残業する。」
進一郎から残業を言い出すなんて…
何に怒ってるんだ