秘書はあらがえない気持ちを抱いて 【おまけ①】
金森家に生まれ、食わせてもらっているからには受け入れるしかない。

だが、それも大人になるまで。
大きくなったらこの家を出ていってやる。
自分の好きなことをやるんだ。

金森を継ぎたい奴なんていくらでもいる。
父さんはどう思っているか知らないが、この家を継ぎたい奴が継げば良い。

俺は自分がしたいように生きたい。

それまでの辛抱だ。

まあ、辛抱と言っても従者になる奴よりは気軽だろう。

それを思えば、従者になる奴が不憫に思えてくる。

屋敷では俺の世話をし、一緒の学校へ通う。

只でさえ遊びたい盛りの子供が、何を好んで幼いときから仕事をあてがわれなければならないのか。

仮に、勉強をして良い成績を残さなければならないことが俺の仕事だとしても、誰かのために自分の時間を削るわけではない。

子供のうちは俺と同じく親に従う定めだとしても、そこが大きく違う。

誰もが、自分の生きたいように生きれたら良いのにな…


【ゴーン…ゴーン…】


遠くから金の音が聞こえて来た。

そろそろ帰らないとな。

ベンチから立ち上がった時、突然風が強く吹いた。

「あっ…」



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