秘書はあらがえない気持ちを抱いて 【おまけ①】
直ぐに反応できず、押さえることが出来なかった麦わら帽子は、大きく舞い上がって岸から離れた池へと落ちてしまった。

どうしたものか…

手を伸ばしても届く距離にはなく、近くに長い棒などもない。

子供でも入れる深さではあるが、タオル等は持ってきてないから靴を脱いで池に入ったとしても、このまま家に帰ったら外に出たことがバレてしまう。

確実に怒られる。

こうなったら…

帽子は庭で遊んでいたら外に飛ばされたということにしよう。

中々苦しいかもしれないが…

そういうことも、なくはないだろう…

考えている間にも、帽子は風に運ばれ遠ざかっていく。

もう諦めよう。

その場から離れようとした時、視界の端に同い年くらいの男の子が映った。

えっ…

そいつはそのままバシャバシャと水しぶきを立て池に入って行く。

丁寧にそっと帽子を拾うと、持ち主を探す素振りもせず迷わず俺の所へ持ってきた。


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