政略結婚は純愛のように〜完結編&番外編集〜
週が明けた月曜日の朝、由梨はいつもの時間に起きていつものように会社へ行く支度をしている。
昨日、朝食の時間を告げた時、家政婦は少し怪訝な表情になった。
それは会社へ行くという由梨を不思議に思ったようだった。
父亡き今、この街に由梨がいる意味はない。
そもそも本当なら働く必要もないのだ。
どうしてまた会社に行くのだと思われているのは明らかだった。
朝食を食べて着替える。
この街に来てから5年間ずっと続けてきたことなのに、身体が重くてつらく感じる。
鏡の前に立ち自分の顔を見ると、ひどく疲れて見えた。
鏡を見つめながら由梨の心に迷いが生まれる。
きっとこのまま由梨が会社に行かなくても誰もなにも言わないだろう。
そもそも父が亡くなった今、由梨自身が本家から呼び戻されるのは時間の問題なのだから。
なにより由梨は、会社へ行くのが怖かった。
出勤して、周囲の人に、あの家政婦のように"なぜ来たのだ"という目で見られたら……。
秘書室のメンバーはそのような人たちではない、と由梨は自分に言い聞かせる。
でも由梨が亡くなった父のために会社にいたということは変えようがない事実なのだ。
もし……。
もうこれ以上、つらい思いをしたくないと、もうひとりの自分が言う。
このまま部屋へ戻り、ベッドへ潜り込んで目を閉じて。
誰にも会わなければ、傷付けられることもないだろう。
……でも。
目を閉じて深呼吸をひとつする。
脳裏に、先週の出来事が浮かんだ。
『月曜日、待ってるよ』
加賀の言葉と、真っ直ぐな眼差し。
由梨はゆっくりと目を開く。
出勤時いつもそうしているように髪をひとつにまとめにすると、自然と背筋が伸びるような心地がした。
鏡の中の自分に向かって、由梨は言った。
「いってきます」
昨日、朝食の時間を告げた時、家政婦は少し怪訝な表情になった。
それは会社へ行くという由梨を不思議に思ったようだった。
父亡き今、この街に由梨がいる意味はない。
そもそも本当なら働く必要もないのだ。
どうしてまた会社に行くのだと思われているのは明らかだった。
朝食を食べて着替える。
この街に来てから5年間ずっと続けてきたことなのに、身体が重くてつらく感じる。
鏡の前に立ち自分の顔を見ると、ひどく疲れて見えた。
鏡を見つめながら由梨の心に迷いが生まれる。
きっとこのまま由梨が会社に行かなくても誰もなにも言わないだろう。
そもそも父が亡くなった今、由梨自身が本家から呼び戻されるのは時間の問題なのだから。
なにより由梨は、会社へ行くのが怖かった。
出勤して、周囲の人に、あの家政婦のように"なぜ来たのだ"という目で見られたら……。
秘書室のメンバーはそのような人たちではない、と由梨は自分に言い聞かせる。
でも由梨が亡くなった父のために会社にいたということは変えようがない事実なのだ。
もし……。
もうこれ以上、つらい思いをしたくないと、もうひとりの自分が言う。
このまま部屋へ戻り、ベッドへ潜り込んで目を閉じて。
誰にも会わなければ、傷付けられることもないだろう。
……でも。
目を閉じて深呼吸をひとつする。
脳裏に、先週の出来事が浮かんだ。
『月曜日、待ってるよ』
加賀の言葉と、真っ直ぐな眼差し。
由梨はゆっくりと目を開く。
出勤時いつもそうしているように髪をひとつにまとめにすると、自然と背筋が伸びるような心地がした。
鏡の中の自分に向かって、由梨は言った。
「いってきます」