傷だらけの黒猫総長
「あの場所って……飛翔謳歌のこと?」
「……あぁ」
静かに答えると、黒羽くんは目を瞑った。
多分、飛翔謳歌のことは、これ以上話してもらえない。
それでも充分、あの場所が、若菜ちゃん達が、黒羽くんにとってどういう存在なのかは分かった。
今の言葉は全部、黒羽くんの“心の声”だろうから。
沢山黒羽くんのお話をしてくれたのが嬉しくて、いつも以上に、“傷だらけ”な黒羽くんの手を、上からそっと握る。
「沢山聞かせてくれてありがとう。辛いことだったよね」
「……辛い、なんて……思っちゃいけない」
黒羽くんは顔を背けて、弱々しい声を発した。
それが黒羽くんの“核心”に思えたから、わたしは体の向きを変えて、両手で黒羽くんの手を取る。