傷だらけの黒猫総長
「そう……。僕、君みたいな不良は嫌いなんだ。君が何をしようと勝手だけど、苑香さんに迷惑をかけないようにしてくれるかな?」
「お、逢見くん……!」
冷酷に告げる逢見くんに対して、黒羽くんは一瞥を返すと、おろおろしているわたしの手を引く。
「何が迷惑かは“苑香”が決める。喧嘩なら、別の機会に売ってこい」
「なっ」
「え? く、黒羽くん……!?」
引っ張られるままに歩くと、黒羽くんは少し振り返って「悪い」と申し訳なさそうな目をする。
わたしが困ってたから、連れ出してくれたのかな……?
名前を呼ばれる機会だけでも貴重なのに、そんな目をされたら、また心臓が変になる。
「……逢見くん、ごめんね! また後で!」
「苑香さん……!」
逢見くんは伸ばしかけた手をグッと握りしめて、黒羽くんの背中を睨んだ。
2人の相性がここまで悪かったなんて、残念だな……。