傷だらけの黒猫総長
薄暗い中で囁くように呼ばれて、ビクビクしつつ黒羽くんを見ると、くすぐったいくらいにそっと、優しく頬を撫でられた。
「大丈夫だ」
たった一言の励ましは、どこか黒羽くんらしくて、不思議と心が落ち着いていく。
でも、心臓のバクバクは治まらなくて……むしろ、激しくなったような。
「あ、ありがとう……」
「ど〜こ〜だ〜……!」
「ひっ!」
気が緩みかけていた時に、すぐ近くからおどろおどろしい声が聞こえて、何も考えずに黒羽くんの胸に飛び込む。
きつく目を瞑って身を硬くしていると、背中に不器用ながらも温かい手が触れて……。
わたしは声が遠のくまで、黒羽くんに身を寄せてじっとしていた。
「……もう、移動していいみたいだ」
「本当に……?」