傷だらけの黒猫総長
恐る恐る顔を上げると、黒羽くんは鍵がかかっていた奥の扉を見て頷く。
「鍵が開く音がした。多分、出口だ」
「よかった……! 早く出よう!」
やっとお化け屋敷から出られる、とホッとして笑顔を浮かべると、視線を戻した黒羽くんと至近距離で目が合った。
お互いに正面を向いた状態だと、改めて顔の近さを実感して……ぶわっと赤面しながら、慌てて離れる。
「ご、ごめんねっ! あの、怖くて思わずしがみついちゃったというかっ」
「……あぁ」
黒羽くんの声はいつも通り落ち着いていたのだけど、不思議そうにちょっと丸くなった瞳は温かみがあって……。
その“変化”に、また胸がドキドキした。
このドキドキは、怖いから……じゃ、ないよね……?
「あ、出てきた! やっほー、2人共〜。楽しかったね〜♪ って、あれ……?」
「……ほう」