傷だらけの黒猫総長
「……ん……」
「あっ」
触り心地のいい髪を堪能しながらぼそっと呟くと、黒羽くんが少し身動ぎして、ぼんやりと目を開けた。
今の、聞かれてないよね……?
「……苑香……?」
「う、うん。おはよう、黒羽くん」
わたしと目が合った黒羽くんは、2回、3回と、眠そうに瞬きをして、柔らかく目を細める。
「おはよう……もっと、撫でて」
「え? あっ……」
そう言われて、頭に手を伸ばしたままだったことに気づいた。
黒羽くんが起きたのにびっくりして、手を戻し忘れてたな……。
「えっと、これでいいかな……?」
「ん……」
指通りが滑らかな髪をゆっくり撫でると、黒羽くんは満足気な声で答えた。