傷だらけの黒猫総長
暴走族との出会い
ナビの終了を告げるスマートフォンから視線を上げて、目の前にデンと構えた倉庫を見る。
「ここが、お母さんの……」
日曜日、お昼休憩のタイミングで家を出てきたわたしは、お母さんの服と写真をバッグに詰めて、写真に書かれた住所の場所に来た。
どうやらここは、何かのグループの集合場所みたいで、倉庫の中からは賑やかな人の声が聞こえてくる。
「それにしても、凄い落書き……スプレーアートって、言うんだっけ?」
倉庫の壁を埋め尽くすように描かれた絵や、難しい漢字の羅列を見て、わたしは少し圧倒された。
上手なものも、歪なものも入り交じっていて、とにかく自由に描かれたんだろうな、と想像できる。
倉庫の脇の方には、大量のバイクが雑多に停められていて、よく見ればしゃがみこんでバイクを弄っている人が数人いた。
「こんにちは。あの、ここってどういうところなんですか?」