傷だらけの黒猫総長
不良だった時も、お母さんはお母さんだった、ってことかな。
「……俺も、いいところだと思う」
ぽつりと、そんな言葉が聞こえて黒羽くんの顔を見る。
黒羽くんは、綺麗なものを遠くから眺める時のような目をして、どこかを見ていた。
……あの場所のことを思い返してるのかな?
「黒羽くんも、お母さんと同じ“総長”さんなんでしょ? 今の飛翔謳歌が素敵なのは、黒羽くんの力でもあるんじゃないかな?」
回された腕に手を添えて黒羽くんを見つめると、“ここ”に戻ってきた目は少し丸くなった。
“総長”さんがどういうものかはよく分からないけど、多分リーダーみたいな感じだよね?
「そう……かな」
「うん。少なくとも、若菜ちゃんは楽しそうだよ。矢吹先輩も、黒羽くんのこと好きなのが伝わってくるから、きっといい“総長”さんなんだね」