傷だらけの黒猫総長
「30秒!」
精神的な限界も考慮して時間を引き延ばすと、司くんはコクリと頷いて神妙に30秒数え始めた。
最近というほど最近でもないけど、お化け屋敷での恐怖体験が記憶に新しいから、余計に怖い。
最初は恐る恐る周りを見ていたけど、15秒を超えたあたりで早くも限界が来て目を瞑った。
20秒からだんだん、司くんの声が上擦っていってるような気も……。
「28、29、30……ほ、ほら、苑香さん、大丈夫だよ」
「うぅ……」
「本当に大丈夫だから、ね?」
そっと肩に触れられて、恐る恐る目を開ける。
周りを見ても、確かに変わったところはない……けど。
ぎゅっと腕に力を込めてから、もう司くんの腕を掴むとかのレベルじゃなく、思いっきり抱き着いてしまっていることに気づいた。