傷だらけの黒猫総長
「どんな気持ちにも、“良い悪い”はないよ。蓋をしないで。わたし、もっと黒羽くんの気持ちを聞きたい」
「……! ……どんなものでも?」
「うん」
微笑んで見つめると、黒羽くんは「じゃあ」と呟くように教えてくれる。
「俺のことも、名前で……呼んで欲しい」
控えめなそのお願いに、鼓動が速くなった。
チラリと、顔色を窺うような黒羽くんの視線に応えてあげたいのに、すぐには声が出なくて、自分で動揺する。
「う、うん。皇……っ、ちょ、ちょっと待ってね!」
「……苑香?」
わぁぁっと熱くなった頬を両手で押さえて、窓の方に顔を背けた。
ドキンドキンと、心臓が落ち着かない。
名前を呼ぶだけなのに、なんでこんなに緊張するんだろう……!?
「……駄目だったか?」