傷だらけの黒猫総長
天使の温もりに溶かされ、ゆっくりと拍動し始めたそれは、再び凍てつき、孤独な世界に戻った。
「皇輝!」
「……君は?」
「あぁ、初めまして。僕は皇輝くんと同じ学校に通っている矢吹葉と申します。2年で生徒会の副会長も務めていまして――」
皇輝は駆け寄ってきた葉にぼんやりと意識を向け、言葉巧みに治雄を言いくるめる柔らかな声を、ただ音として聞く。
どれくらいの間そうしていたことか、葉が「では、失礼します」と皇輝の背中を押したことで、皇輝は治雄から離れて歩き出した。
「……皇輝、今日は倉庫に戻ろうか。明日は僕が総長の代わりを務めておくから、学校に行って、市松さんに会っておいで?」
「……苑香……」