傷だらけの黒猫総長


ひとまず席を立つと、皇輝くんは優しい眼差しを向けてわたしを連れ出し。

わたしは、皇輝くんの瞳にドキドキしながら、階段を上がる彼に着いて行った。




「皇輝くん、また屋上に出るの?」


「ううん」




屋上の扉の前で足を止めた皇輝くんは、そう答えながら振り向くと、唐突にわたしを抱き締める。




「ひゃわっ、こ、皇輝くん……っ!?」


「うん……」




返事をしつつも、わたしをぎゅうっと抱き締めたまま動かない皇輝くんの様子に、何かあったのかな……? と思い至った。


ドキドキを超えてバクバクしてる鼓動が、皇輝くんに伝わりそうでちょっと気が気じゃないのだけど……。

わたしはそっと、皇輝くんの背中を撫でてみる。




「……どうしたの?」



< 176 / 283 >

この作品をシェア

pagetop