傷だらけの黒猫総長
まだ、内緒の気持ちもあるけど。
そんなふうに付け足しながら頬を包み込むと、皇輝くんはグッと噛み締めるように目を細めて、上から手を重ねた。
「……ありがとう。苑香が認めてくれるなら、辛くない。俺、頑張るから……見てて」
目を伏せながら、ずらした手のひらにチュッとキスをされて、ぼぼぼっと顔が熱くなる。
皇輝くんは伏せた目をそっと開いてわたしを見ると、キョトンとした。
「……苑香?」
「はっ、はい!」
「顔が赤い……また、熱……」
「じゃ、ないよっ!? 大丈夫、大丈夫だから! あの、ちょっとびっくりして!」
必死に弁解して、その場はなんとかお姫様抱っこの回避に成功した。
わたしはその後に鳴った本鈴に急かされて、皇輝くんと教室に戻りながら、熱の余韻が残る頬を押さえて思う。
皇輝くんって……いわゆる、“たらし”なんじゃ?