傷だらけの黒猫総長


皇輝くんが動いたことで再開した周りの喧騒が耳に入っていないように、皇輝くんは悲しみが浮かんだ瞳でわたしだけを見つめた。




「後で必ず、手当する」




そう言って、頬にチュッとキスをした皇輝くんは、静かに怒りを燃やして、尻もちをついている男の人の元へ行く。

わたしは不思議と痛みが和らいだ頬に触れて、皇輝くんが怪我をしないように、と祈った。




「病院送りにしてやる――……」


「っ、じょ、上等だ、人質なんかなくてもやってやるっ!」



「そのちゃん!」


「ぁ、若菜ちゃん……!」


「巻き込んじゃってごめんね、ここからは“なー”が守るから! ……うちの天使ちゃんに近づいたらぶっ飛ばすよ!」




皇輝くんと入れ替わるように駆け寄ってくれた若菜ちゃんは、お腹の底から出したような怒鳴り声で、悪い人達を圧倒する。

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