傷だらけの黒猫総長
若菜ちゃんは近くに停めてあった可愛い色のバイクに股がって、悪い人達の動きを邪魔するように蛇行運転を始めた。
一方のわたしは、若菜ちゃんに言われた通り、皇輝くんに駆け寄ろうとして、息を飲む。
バキッ
ボコッ
「皇輝! もういい、引き上げるよ!」
「コウ!? ちょっと、警察が来てるって!」
皇輝くんは周りの人を雑に殴り飛ばしながら、わたしを殴ったあの男の人を、まだ相手にしていた。
大きいサイレンの音も、矢吹先輩達の声も、まるで聞こえていないみたいに。
「皇輝くん……っ」
ファンファンファンファン
《そこの集団、止まりなさい》
「……! 若菜ちゃん、行くよ!」
「でもっ、コウが!」
「もう駄目だ、今は置いて行く!」
「っ……そのちゃん、コウをお願い!」