傷だらけの黒猫総長
「……何の用で、来た?」
落ち着いた声は耳馴染みがよく、わたしは少し聞き惚れてしまった。
初めて会ったというのに、あの瞳にじっと見つめられると、なんだか手を伸ばして彼に触れてみたくなる。
……不思議な人。
「わたしのお母さんと、この場所のことを教えてもらいたくて」
「お母さんと倉庫のこと? 初代総長のことはあなたの方が詳しいんじゃないの? っていうか、本人に聞いたら?」
聞かれたことに答えると、ソファーの背もたれに肘をついて前屈みに立っている女の子が、不思議そうな顔で口を挟んだ。
明るい髪色でヘアアレンジもしていて、モデルやアイドルみたいに可愛い女の子だ。