傷だらけの黒猫総長
皇輝くんは我に返ったように、わたしの腕を離して後ろ手に庇うと、素早く周囲の様子を確認した。
「苑香、俺から離れないで」
「う、うん!」
「オラァ! 姑息な真似しやがって!」
「てめぇだけでも仕留めてやる!」
悪い人達は人数差も関係なく、全てを皇輝くんのせいにするように殴りかかってくる。
皇輝くんはわたしを庇いながら応戦して、パトカーが止まるまで、悪い人達に囲まれていた。
ファンファンファン……
「止まれ! 現行犯で逮捕する!」
「うるせぇっ、サツが!」
「皇輝くんっ!」
「大丈夫、苑香は平気だから」
悪い人達が次々に取り押さえられていく中、皇輝くんは少し呼吸を乱しながら、わたしにそう言う。
そんなことが言いたいんじゃないのに、それからまもなく、わたし達も警察の人に同行を求められて、乱闘騒ぎは鎮圧された。