傷だらけの黒猫総長
「……どうしてかな?」
「実際に苑香さんが傷ついたから」
キッパリと言い切る言葉を聞いて、やっぱり司くんのお話もちゃんと聞かなきゃいけないなぁ、と思う。
「苑香さんの言う通り、彼が善良な人物だったとして。彼自身に、苑香さんが傷つけられることや、困らされることはないんだろう」
「……うん」
「でも、彼が不良なら、周りがそういう扱いをして、彼の周りにいる人を放っておかない。彼がそれを望んでいなくても」
「そうかもしれないね」
昨日のことを思い出しながら頷いて答えると、司くんは純粋な心配が浮かんだ瞳で、わたしをじっと見つめた。
「それに、苑香さんは人を信じるところから始まるから……“不良でもいい人”な彼に慣れて、他の不良への警戒心もなくなるだろう?」
「うん……そうかも」