傷だらけの黒猫総長
閉ざした心
この間も若菜ちゃんが乗っていた、可愛い色のバイクに2人乗りして着いたのは、高層マンションの前。
ここが皇輝くんのお家、と呆気にとられると、若菜ちゃんはわたしの手を引いて中に入った。
「葉くんセンパイ!」
エントランスの奥には矢吹先輩が立っていて、中から開けてもらう形でわたし達は住居部分に入る。
若菜ちゃんと同じく私服姿の矢吹先輩は、いつもより控えめに微笑みながら、わたしに挨拶をした。
「来てくれてありがとう。説明は移動しながらするよ」
そう言われて3人でエレベーターに乗ると、矢吹先輩は振り向いて、目的の階に着くまでの間、説明をしてくれた。
助けが必要な、皇輝くんの現状について。
「皇輝は2年前からご両親の元を離れて、詠二さんと暮らしていたんだけどね。停学になってから、ここに戻って来ていたみたいで」