傷だらけの黒猫総長
皇輝くんのお父さんは、エリートと呼ばれる類の、とても優秀な人らしい。
だけどそれ故に、自分の子供に対しても理想が高く、皇輝くんが優秀であることを望んでいるのだとか。
それの何が問題かと言えば、皇輝くんがお父さんの理想についていくことができず、疲れきってしまっていることで。
そばで見てきた詠二お兄ちゃんも、幼馴染みの若菜ちゃんも、皇輝くんがお父さんの元にいることは良くないと思っているみたいだ。
「だけど今日、詠二さんと僕達で皇輝を迎えに来たら、皇輝自身がお父さんの元にいることを望んでいて」
「コウがここに戻って来てるって、気づくのが遅かったの……。一番素直に聞くエージさんの言葉だって、今のコウには届いてなかった」
「市松さんは出会った時から特別だったから、君の言葉なら、今の皇輝にも届くかもしれない。だから、力を貸して欲しい」