傷だらけの黒猫総長
飛翔謳歌
「――飛翔、謳歌?」
キョトンとして繰り返すと、一瞬お部屋の中がしん、とした。
飛翔謳歌って、確かお母さんの服に縫われてた名前だよね。
倉庫の脇で会った人達も、何度か口にしていたっけ。
「本当に何も知らないんだ……」
「……今日は、どうやってこの場所に来たのかな?」
可愛い女の子が呟くように言った後、ソファーに座っている優しげな微笑みを浮かべた男の人が、そう聞いた。
わたしは外でも見せた写真をもう一度取り出して、裏面に書かれた文字を見せる。
「その服と一緒に、この写真が仕舞ってあって……裏に住所が書かれていたので、スマホで調べて来てみたんです」
「へぇ〜、本当だ。まぁ、初代総長なら知ってて当然だよね〜」