傷だらけの黒猫総長
「一緒にいたら、……また、感情的になるかもしれない」
「それの何が悪いのよっ!」
「落ち着いて、若菜ちゃん」
後ろの2人の声を聞きつつ、わたしは皇輝くんに“怯えた子猫”の姿を見た気がして、その手を取った。
ピクッと跳ねた手を両手で包み込んで、皇輝くんの表情を注意深く見つめる。
「感情的になるのが、怖いの?」
「……、……」
微かに動いた視線は、言葉こそ無かったものの、“肯定”を表しているように思えた。
「わたしは感情的な皇輝くんも好きだよ。温かくて優しいもの。……あの日、怒ってくれたのだって嬉しかった」
「でも、……俺は……」
それはほとんど勘のようなもの。
言い淀む皇輝くんが気にしているのは、あの時のことじゃないかって。