傷だらけの黒猫総長




「一緒にいたら、……また、感情的になるかもしれない」


「それの何が悪いのよっ!」


「落ち着いて、若菜ちゃん」




後ろの2人の声を聞きつつ、わたしは皇輝くんに“怯えた子猫”の姿を見た気がして、その手を取った。

ピクッと跳ねた手を両手で包み込んで、皇輝くんの表情を注意深く見つめる。




「感情的になるのが、怖いの?」


「……、……」




微かに動いた視線は、言葉こそ無かったものの、“肯定”を表しているように思えた。




「わたしは感情的な皇輝くんも好きだよ。温かくて優しいもの。……あの日、怒ってくれたのだって嬉しかった」


「でも、……俺は……」




それはほとんど勘のようなもの。

言い淀む皇輝くんが気にしているのは、あの時のことじゃないかって。

< 231 / 283 >

この作品をシェア

pagetop