傷だらけの黒猫総長
傷の正体
皇輝くんの説得も無事終わって、みんなで帰ろう、という空気に変わった時、ガチャッと玄関の方から音がした。
「嘘、なんで……っ」
そんな若菜ちゃんの呟きが聞こえて、都合の悪い状況なのだと悟る。
わたしはリビングに向かってくる人を目にする前に、皇輝くんごと、詠二お兄ちゃんの後ろに隠された。
「お前は家を出たはずだがな……詠二。それに君達、学校はどうした? 見覚えのある顔もいるようだが」
「……」
「大事なもん取りに来たんだよ。あんたこそ、ご立派な仕事はどうした?」
「想定より早く片付いたから、空いた時間で愚息の様子を見に来たところだ。どうやら私の行動は、無駄にならなかったようだな」
淡々とした冷たい声に、皇輝くんがビクリと肩を揺らして、体を強ばらせる。