傷だらけの黒猫総長
この声の主が、皇輝くん達のお父さん……?
「皇輝。そこにいるのだろう。よもや、義兄の言葉にまた誑かされたのではないだろうな?」
「っ……」
「ハッ、悪かったな。不良に誑かされるような出来の悪いあんたの“愚息”は、俺が貰っていくから安心しろ」
「それはまだ私の管理下にある。義兄と言えど、私の許可なく連れて行けば誘拐になることくらい、お前でも分かるだろう?」
お父さんらしき人の言葉に、詠二お兄ちゃんは舌打ちをした。
色んな家庭があるのは分かっているつもりだけど、まるで詠二お兄ちゃんを蔑んでいるかのような口振りに、胸が痛む。
「では、帰ってもらおうか。君達はただでさえ出来の悪いうちの愚息に、更なる悪影響を与えるようだからな」