傷だらけの黒猫総長
「だろうな。その点を理解しても、まだ言いたいことが?」
「はい。今言った通り、わたしは“今の”皇輝くんのことは知っています。ですから、現在に於いての指摘は確信を持ってできます」
「……ほう。つまり、過去は私の認識が正しかったかもしれないが、現在は私の認識が間違っていると言いたいのか?」
「そうです」
強い意思で真っ直ぐお父さんを見れば、その目は細められる。
「それなら、理にかなっているな。私はここ2年の皇輝について、人づてにしか情報を得ていない。君の意見を聞こうか」
「ありがとうございます。皇輝くんは休み休み学校に来ている“不良”に類する人ですが、学力はクラスで1番です」
一歩踏み込めたという確かな感触を得ながら、わたしは嘘偽りのない言葉を口にした。