傷だらけの黒猫総長
「家庭教師……?」
「遠坂伊吹先生という方だ。学歴は信頼に値するものだったが、思えば詠二が連れてきた者だからな……現状を鑑みれば疑わしい」
「え」
伊吹さん? と、若菜ちゃんと詠二お兄ちゃんに視線を向けると、2人とも事情を知っているような顔をしていた。
「2年前から、皇輝は遠坂先生のお宅に住み込んで、徹底管理したスケジュールの元、授業を受けている……と、私は認識している」
「間違っちゃいねぇよ。多少、融通利かしてもらいはしたが」
「……」
矢吹先輩から聞いたお話とは違うお父さんのお話、詠二お兄ちゃんの言葉、俯きがちに目を逸らしている皇輝くんの姿。
詠二お兄ちゃんでは嘘を吐いているのかどうか分からなかったけど、皇輝くんから感じるのは後ろめたい気持ち。