傷だらけの黒猫総長
「苑、香……、俺……」
「大丈夫。わたしを信じて。きっと伝わる。伝えてみせるよ」
両手で皇輝くんの手を握って、口元に寄せた。
震える手に、グッと力が入って、わたしの手が握り返される。
皇輝くんに、どれだけ怖いことを強いているか。
好きな人をわたしが苦しめているなんて、これほど嫌なこともない。
せめて少しでも救いがあるように、この手はずっと握っているから。
「――苑香の言う通り、皇輝はずっと俺んとこにいた。伊吹はあんたを納得させる為に選んだ協力者……俺のダチだ」
詠二お兄ちゃんは、苦みを残したままそう話し始めて、お父さんに全てを打ち明けた。
2年前、皇輝くんを引き取る準備ができて、伊吹さん協力の元、家から連れ出す計画を実行したこと。
皇輝くんの心を取り戻す為に、自由を大切にする暴走族、飛翔謳歌を紹介したこと。