傷だらけの黒猫総長
積み上げたもの
「テストの結果によっては、改めよう。教科書と筆記用具を持ってきなさい、皇輝」
「……はい」
皇輝くんはわたしに視線を向けてから、そっと手を離してリビングを去った。
ようやく、お父さんに思いが通じた……。
そう思ったのは、わたしだけじゃなかったみたいで、若菜ちゃんも矢吹先輩も、晴れやかな笑顔で振り返ってくれる。
詠二お兄ちゃんはまだ顔つきに険を残したまま、それでも目が合えば褒めるように微笑んでくれた。
当のお父さんは、壁に掛かっている時計をチラリと見ると、わたしに声をかける。
「君は皇輝と親しいようだな。他所の家の事情に口を出すのは、君が皇輝の恋人だからか?」
「え? いえ……」
「それならば、これ以上は口を挟まずに帰りなさい。皇輝との付き合いも今後控えるように。尤も今あれは停学中だが」