傷だらけの黒猫総長
「皇輝、もう肩の力抜いていいからな。これで本当に、親父から解放されたんだ」
皇輝くんの隣に移動した詠二お兄ちゃんは、そう言って皇輝くんの頭も撫でた。
「そうだよ、コウ! もう自由なの! 後はパーッと遊ぶだけ♪」
「ふふ、いつもと変わらないけどね」
若菜ちゃんと矢吹先輩も皇輝くんのそばに移動して、皇輝くんがみんなに囲まれる。
わたしは涙を拭いながら頷く皇輝くんの胸に、心のまま飛び込んだ。
「皇輝くんっ、よかったね!」
ぎゅうっと抱き着いて、満面の笑顔で心からの言葉を口にすると、皇輝くんは目を丸くして。
「うん。――ありがとう、苑香」
瞳に溜まった涙が、目尻から一筋こぼれる。
微笑った皇輝くんの顔は、とても綺麗で、温かい心が、豊かな感情が、溢れ出していた。