傷だらけの黒猫総長
『泣きたい時は、思いっきり泣くの。全部出し切ったら、自然と立ち上がる気力が湧いてくるから……その時に、また笑うのよ』
わたしが泣いていると、お母さんはいつもそう言って、優しく背中を撫でてくれた。
お父さんが亡くなった時も、そう。
『苑香。辛いことだけど、よく聞いて。亡くなった人は、二度と戻ってこないの。だから、いつかはちゃんとお別れしないといけないわ』
『ひっく……お母、さん……』
『今は、沢山泣きましょう。でも、私達がずっと泣いていると、お父さんが心配して困っちゃうから、後少ししたら立ち上がろうね』
『……うん……』
泣き腫らした赤い目で、わたしを真っ直ぐに見つめて微笑んだお母さんの顔は、今でもよく覚えている。