傷だらけの黒猫総長
感覚の話はやはり分からない。
「あー、あれだ。それにしても、驚いたぞ? 皇輝があそこであの子の頼みを断るとは」
「そうですね。僕も皇輝なら頷くと思っていました」
「あぁ、あたしも。っていうか、皇輝はほぼ断る選択肢が頭に無いだろう?」
「む〜……それは“なー”も思ったけど。なんで? コウ」
話を変えた壮馬先輩に皆が追従して、俺に視線が向く。
聞かれたことを頭の中で反芻して、そんなに変わったことをしただろうか、と考えた。
「理由なら言った」
「“初代総長の娘でも、暴走族に関われる人間じゃない”、かな?」
「ふぅむ、まぁ、あの子は“いい子ちゃん”の匂いがぷんぷんしたからな。そこは分からんでもないが」
「コウがそんな気を回せるのが不思議、でしょ? “なー”もそう思う」