傷だらけの黒猫総長
「――……いや。答えは変わらない。もしも、本当に……そんな感情が俺の中にあったとしても。それを優先する必要はない」
「「「……」」」
「コウ……」
一目見て分かる“聖なる存在”を、暴走族の世界に触れさせるわけにはいかない。
彼女をこちらに引き込もうとするのが、俺の感情だと言うなら……そんなもの失くしてしまえばいい。
「……分かったよ、総長。どうやら僕達も、今日のことは忘れた方がいいみたいだね」
葉先輩の声が幹部部屋に柔らかく響いて、沈黙が落ちる。
俺は目を瞑って、彼女のことを忘れることにした。