傷だらけの黒猫総長
そうとだけ言って席を立った黒羽くんの手を、わたしは即座に掴む。
今度は逃げられる前に確保できた。
「……離せ」
「ごめんね、離したら逃げられちゃうから。もう少しだけお話聞いてくれないかな?」
「……」
掴まれた手を見て、わたしを見た黒羽くんは、表情こそ変わっていないものの、どことなく困っているように思えた。
……昨日のことは、あんまり話さない方がいいんだよね?
それじゃあ、場所を変えた方がいいのかな。
「一緒に来てくれる? どこか、静かなところだったらお話できるよね」
「……分かった」
大人しく頷いた黒羽くんを見て手を離すと、解放された手はズボンのポケットに入って、スマートフォンと共に出てきた。