傷だらけの黒猫総長
「わたしの名前は、市松苑香です。改めてよろしくね、黒羽皇輝くん」
「――……」
ニッコリと笑うと、押しに流されたのか、黒羽くんはコクリと頷いてくれた。
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Side:―――
「……」
矢吹葉は遠ざかっていく足音を聞きながら、スマートフォンを見た。
チャットが表示されたその画面には、少し淡々としたやり取りが残されている。
[校内の人が来ない場所を教えてくれ]
[離れ校舎の西階段。踊り場だと見つかりにくいよ。本校舎の3階に渡り廊下があるから、そこを通って突き当たりまで真っ直ぐ]
[分かった]
階段に腰を下ろしている葉は、画面表示を消したスマートフォンを口元に当てて、微笑んだ。
「昨日の今日で……皇輝にとっては、よかったのかもしれないね」
盗み聞くことになった会話の内容を反芻すると、葉は思慮深い瞳をどこへともなく向けた。
「彼女なら……きっと、皇輝を救える。――あの人に報告しておこうかな」