傷だらけの黒猫総長
「黒羽くんのお兄さんなんですね。こんにちは、初めまして。黒羽くん……えと、皇輝くんと同じクラスの、市松苑香です」
「あぁ、普段の呼び方で構わねぇよ。ご丁寧にどうも」
「はい。……あの、お母さんに御用って……」
眉を下げて見上げると、詠二さんは目を伏せて笑みを消した。
「聞いてる。お線香上げさせてもらえねぇかと思ってな」
「……! 分かりました。どうぞいらしてください。お母さんの為に、ありがとうございます」
微笑んで答えると、詠二さんも口元に笑みを戻して、わたしを車に乗せてくれた。
まさか、黒羽くんのお兄さんもお母さんのことを知っているなんて。
詠二さんも、“思い出の倉庫”に関係がある人なのかな?