傷だらけの黒猫総長
さっきのが冗談だった、みたいな口振りだけど、詠二さんは本気で言ってたよね……?
「確かに、急に出会いましたけど……詠二さんは、ずっとお母さんのことを想っていたんですよね? だったら、わたしと同じです」
「……ハハッ、同じじゃないだろ。あーあ、今のが一番“娘”だって実感したなぁ」
楽しそうに笑いながら、詠二さんは片手を伸ばしてわたしの頭をわしゃわしゃっと撫でた。
なんだか久しぶりに頭を撫でられた気がして、わたしの胸はポカポカする。
「俺は佑香さんに娘がいたって聞いて、妹ができたような気分になったけどな。嬢ちゃんが無理に合わせる必要はねぇよ」
「同じ親を持つ子供は兄弟でしょう? ……それに、今の……嬉しかったです。お兄ちゃんって呼びたくなりました」
撫でられたところを押さえて、えへへ、と笑うと、詠二さんは目を丸くして、優しく笑った。