傷だらけの黒猫総長
「あ、市松さん。この前説明した仕事なんだけど、ちょっと補足があるから来てくれる?」
「……? はい」
この前教えてもらった仕事ってなんだっけ、と思いながら矢吹先輩に着いていくと、ファイルが並べられた棚の前で足が止まる。
手招きされて横に立てば、矢吹先輩はファイルを開きながら、ヒソ、と声量を抑えた。
「先週、皇輝の世話を焼いてくれたんだって? ありがとう」
「……! いえ。わたしはむしろ、黒羽くんに助けてもらった方ですから」
矢吹先輩と黒羽くんのお話をするのは初めてだったから、少し驚きながらも、小声で返す。
すると、先輩は優しく微笑んで、ファイルの適当なところを指で指しながら言った。
「君に会ってから、皇輝はちょっと人間らしくなったよ。これからもよろしくね」
「……はい!」