傷だらけの黒猫総長


笑顔で頷くと、矢吹先輩はファイルを閉じる。




「それじゃあ、やってて分からないところがあったら聞きに来て」


「はい、分かりました。ありがとうございます」




普通の声量に戻った矢吹先輩に合わせて、仕事を教えてもらったフリをすると、微笑んで頷かれた。

よく出来ましたって言われてるみたい。


内緒話の仕方がスマートでかっこいいなぁ、と思いながら矢吹先輩と別れると、わたしは1人で頬を緩ませた。

黒羽くんは、色んな人に想われてるんだな。




「苑香さん」


「あ、逢見くん。お疲れ様」




声を掛けられて顔を上げると、さっきの会議でホワイトボードの板書係を務めていた逢見くんがそばに立っていた。

< 82 / 283 >

この作品をシェア

pagetop