高嶺の寺子さんは、銀髪の先輩に溺れることにした
「今日、私が先輩とここへ来たのには、理由があります」
「本当にいきなりだな。もう流石に慣れてきたわ。で?」
「先輩のことを知るために来ました」
「ふーん、そんな面白いことないけどね」
「いえ! 私からしたら、その銀髪の時点で既に面白いです」
「おまっ! これ気に入ってんだぞ。そんな目で俺を見てたのかよ…」
「でも、よく似合っているので大丈夫ですよ」
「あっそ」
少し不貞腐れている。
「だから、まずは名前を教えてください」
「はぁ、しつこい女だな。在原夏目。知ってるだろうけど高3」
「はい、存じ上げています。それより、在原さんと言うのは本当ですか?」
「何、どこに食いついてんの? てか、当たり前だろ。なんで、自分の名字を偽る必要があるんだよ」
「す、すいません。実は私の初恋が、かの有名な在原業平様なんです!」
「いや、誰?」
「知らないのですか!?」
「名前からして、歴史上の人物だな。家帰ったら検索してみるわ」
「はい! 是非!」
在原業平様は、平安時代前期に活躍した歌人。
『ちはやふる 神代も聞かず 龍田川 からくれないに 水くくるとは』
この有名な歌を詠み、その恋の多さと美しい顔立ちから派手な生活をされていたそうだ。