高嶺の寺子さんは、銀髪の先輩に溺れることにした

「今日、私が先輩とここへ来たのには、理由があります」

「本当にいきなりだな。もう流石に慣れてきたわ。で?」

「先輩のことを知るために来ました」

「ふーん、そんな面白いことないけどね」

「いえ! 私からしたら、その銀髪の時点で既に面白いです」

「おまっ! これ気に入ってんだぞ。そんな目で俺を見てたのかよ…」

「でも、よく似合っているので大丈夫ですよ」

「あっそ」

 少し不貞腐れている。

「だから、まずは名前を教えてください」

「はぁ、しつこい女だな。在原夏目(ありわらなつめ)。知ってるだろうけど高3」


「はい、存じ上げています。それより、在原さんと言うのは本当ですか?」

「何、どこに食いついてんの? てか、当たり前だろ。なんで、自分の名字を偽る必要があるんだよ」

「す、すいません。実は私の初恋が、かの有名な在原業平(ありわらのなりひら)様なんです!」

「いや、誰?」

「知らないのですか!?」

「名前からして、歴史上の人物だな。家帰ったら検索してみるわ」

「はい! 是非!」

 在原業平様は、平安時代前期に活躍した歌人。

『ちはやふる 神代も聞かず 龍田川 からくれないに 水くくるとは』

 この有名な歌を詠み、その恋の多さと美しい顔立ちから派手な生活をされていたそうだ。

< 20 / 28 >

この作品をシェア

pagetop