高嶺の寺子さんは、銀髪の先輩に溺れることにした

「あんたの初恋話は、長そうだからいいや」

「いつでもお話しますから、聞きたくなったら言ってください」

「はいはい。あと聞きたいことは?」

「えーと…」

「もしかして、名前を聞くためだけに、あんな豪語したわけじゃねぇよな?」

 その、『もしかして』で言葉が詰まる。

「俺に興味ねぇな?」

「そ、そんことはないですよ…。アハハ」

 笑って誤魔化してはみたけれど、先輩の視線が痛い。

「はぁ、俺と居んのに…。こんな女初だわ」

「すみません、初めての女で」

「人をチェリーボーイみたいに言うな! たくっ、調子狂うな」

 先輩の眉間に、深い皺が刻まれ始めている。

「莉子!」

「は、はいっ!」

「今日何時まで大丈夫なんだ?」

「あ、えっと、18時には家に帰らないとで」

「早いな。まぁ、でも2時間はあるか。よし、行くぞ」

「え、行くってどこに?」

「決まってんだろ。俺の魅力を存分に発揮できるところだよ」

 先輩は立ち上がると、伝票を持ってレジに向かった。

「あ、まっ、待って先輩」

 どんくさい私にも、その身軽さとフットワークの軽さをください。
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