高嶺の寺子さんは、銀髪の先輩に溺れることにした

「へ!? つ、付き合ってないよ!」

 そんな噂がたっていたとは。

 思わず立ち上がってしまった。

「寺門と津崎、どうした?」

「あ、何でもないでーす」

「だ、大丈夫です。すみません」

「そうか。仲がいいのは素晴らしいが、今は先生が話す番だからな」

 クラス中の注目を浴びて、冷や汗が出てきた。

 津崎くんは、顔の前で手を合わせて頭を下げている。

 私が顔を左右に振って見せると、彼は安堵した表情で前を向いた。

(私と先輩の噂があったなんて…)

 何故だろう。

 少し顔がにやけてしまう。

 気を紛らわすため窓の外を眺めると、3年生が体育をしていた。

 そして、一際目立つ銀髪の頭を見つける。

 しばらく見つめていると、顔を上げた先輩とは目があった。

 思わず小さく手を振ると、先輩も控えめに手を振り替えしてくれる。

「…何、あの笑顔」

 この席は、想像以上に楽しいかもしれない。
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