高嶺の寺子さんは、銀髪の先輩に溺れることにした

 会話の全てを無視して歩き出した時、輪の中心にいた先輩が道を塞いできた。

 ピアスを着けた銀髪の人。

「…何ですか?」

 この見た目のせいで、変な異姓から絡まれ慣れてはいるが…、それでも少し怖い。

「あのさ、これあんたの?」

「…違います」

「あっそ。引き留めて悪かったな」 

「いえ、失礼します」

 そう答えて、自分は学校を後にする。

 しかし、冷静な態度とは裏腹に、背中は冷や汗が伝っていた。

 何故あの人が、密かに書きためていた私の小説を持っているのだ。

 咄嗟に否定したけれど、もし後々作者が私だとバレたら…。
 
「そんなの無理だっ!」

「何が?」

 突然後ろから声が聞こえて、肩を跳ね上げる。

「これ、やっぱりあんたのでしょ」

「さっきの先輩…! 違うと言ったはずです」

 まさか、帰宅ルートが同じたったとは…。

 どうやら今日は厄日のようだ。

「無理言うなよ。ノートの裏に小さく名前が書いてあるんだからさ、寺門莉子ちゃん?」

 父の教えで、持ち物全てに名前を書くことが私の体に染み付いている。

 それがまさか、こんなところで自分の首を絞めるとは…。
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