高嶺の寺子さんは、銀髪の先輩に溺れることにした
「でもどうしても…! どうしても、納得のいく小説を書けるようになりたいんです! これが、私の青春の全てなんです!」
「はぁ…、案外しつこいな」
「先輩のその目…、たまりません!」
「あんた、想像よりずっとヤバイ奴だね」
「その気だるさも、たまりません…!」
「分かった分かった。引き受けるから、変なこと言うのやめろ。怖いわっ」
若干引かれているが、粘った甲斐があった。
「ただし、条件がある」
先輩は一歩近づくと、私の顎を持ち上げてニヤリと笑った。
「へ?」
「莉子、必ず俺に溺れろよ」
溺れる…?
溺れるとは、彼に首ったけになると言うことなのだろうか。
「それは、どういう意味で」
「例え師弟関係であっても、今日から俺以外にときめくなよ」
この時の先輩の目は、まるで特大の獲物を見つけたかのようなハンターの目をしていた。