追放聖女はスパダリ執事に、とことん甘やかされてます!
「名前は呼んで欲しいけど、もう少し、その……いつも通りの距離感が良いなぁって思いまして……」

「何故です? あなたが私に名前を呼ばせたのは『壁を無くしたい』からでしょう? ですから私は、ヘレナ様との距離を縮めるために、一切の遠慮を止めたのです。ここまで踏み込ませたのは他でもない――――あなた自身ですよ?」


 レイはずいと身を乗り出し、ヘレナの手を握った。熱い眼差し。ヘレナの頭の中が真っ白になる。


(えっ……えぇと…………つまり、どういうこと?)


 ヘレナは決して察しの良い方ではない。半ばパニックに陥りつつ、レイの真剣な表情を見つめる。


「や……やっ――――――やっぱり、お嬢様で良いです」


 逡巡の後、ヘレナはそんな結論に達する。レイは満足気に微笑み「承知しました」と口にした。
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